代表のメッセージ

Kizuna Across Cultures設立のきっかけは、2011年の東日本大震災でした。当時、米国のワシントンDCを拠点としていたアメリカ人と日本人10名ほどが、東北の若者の未来の可能性を広げるために何かしようと集まりました。オンラインの活用が突破口になると考え、「では、東北の高校のクラスと米国の高校の日本語クラスをつなげて、オンラインで交流してもらおう!」と活動に着手しました。

 

開始当初、オンライン交流は一般的ではなかったため、参考にできるものがなく、先生方のご協力を頂きながら、自分達でゼロから設計することになりました。しかし、海外に同世代の友人を持ったことのなかった高校生達が、興奮気味に相手校の生徒達とやりとりし、瞬く間にコミュニケーション力を伸ばしていく様子に、オンライン交流プログラム「Global Classmates」の絶大な効果はすぐに明白となりました。

 

その後東北以外の地域からの参加も順次受け入れるようになり、2023年現在、日本と米国全体から、年間約80校、2200名以上の生徒が参加するプログラムへと成長しています。

新型コロナによるパンデミックにより、海外渡航を伴うあらゆるプログラムが中止になってしまった数年間にはより一層、「Global Classmates」プログラムは、多くの生徒達にとって国際的な体験を得られる唯一の場として機能し続け、多くの教育現場から高い評価を得ました。

 

若い頃に得た原体験はその後の人生に大きな影響を与えますが、海外を訪れる機会が得られる高校生はごく一部に限られています。また、様々な情報に瞬時にアクセスできるようになった今、私達にとって世界は身近になるはずが、似た価値観や似た環境のもの同士からの情報に包囲されやすくなり、異なるグループ間の溝が埋まりにくいという課題にも直面しています。

 

そんな今日において、Kizuna Across Culturesが育みたい人材像は、「異なる考えを持つ人達の間に橋を架け、連携を育むことのできる人」と表現できます。

感性の柔軟な時期に、安全な場で、背景の異なる相手と、人と人して向かい合い、心を通わせる経験を得て、その手応えと自信を初期設定としてインストールし、社会に羽ばたいてほしいと考えています。

 

私は、かれこれ10年以上Kizuna Across Culturesを運営し、またプライべートでも子育てを経験するようになり、人が育つ過程には、然るべき手間や手入れ、熱意ある大人の関わりが不可欠だと実感するようになりました。

 

Kizuna Across Culturesの活動においても、関わる方々の熱意の総量―先生方の毎日の創意工夫、KACスタッフの挑戦心ときめ細かなサポート、プログラムの企画・設計に関わる専門家の方々のあくなき探求心、スポンサーの方々の次世代育成への物心両面のコミットメントーの大きさが、生徒の体験や学びの大きさに直結すると確信しています。

 

このKizuna Across Culturesコミュニティの皆様と共に、これからも、時代を少し先取りしながら、学校や生徒さん達のリアルな日常に取り入れられる形を意識して、挑戦と進化を続けてゆきたいと思います。

 

Kizuna Across Cultures代表

スメサースト文子